美術と猫と観劇と

「三度の飯より猫が好き」な福岡在住のフリーライターによる、主に美術鑑賞と観劇の感想ブログです。

無類の猫好き、「ねこ学への招待」展へ行く

猫好きの、猫好きによる、猫好きのための展示

西南学院大学博物館

「ねこ学への招待」展が行われた西南学院大学博物館

「猫は好きですか?」と聞かれて、「いいえ」と答える人は日本国民にはいないのではないだろうか。

 

そう思ってしまう程、近代社会は猫のモノに溢れている...

ように感じてならない。

 

そんな猫ブームの中、「ねこ学への招待」なる猫好き必見の展示が西南学院大学博物館で行われていることを知り、早速行ってきた。

 

結論から言えば、展示は大変見応えがあり、猫がそこまで好きではないと思う方でもきっと楽しめるであろう内容であった。

 

「ねこ学」とは、そのかわいらしい響きからは想像できない様な奥深いものであったのだ。

 

そんな「ねこ学への招待」展について、三度の飯より猫が好きな筆者が、「これは!」と思った部分を紹介していきたいと思う。

 

そもそも、何で猫なのよ?

西南学院大学博物館

入り口から猫に溢れている

博物館で「猫について」の企画展示を行うなんてことは、なかなか無いのでは無いだろうか。

 

 猫なんて、特に珍しい生き物ではないし。

家や近所にいるという方も多いだろう。

 

ますます「何で猫?」と思ってしまうが、その理由は西南学院大学にねこ学を研究している教授がいらっしゃるから。

 

この展示は「西南学院大学博物館研究室訪問シリーズ」という企画の一環で、人間科学部の教授である山根明弘先生の研究に基づいたものである。

 

山根先生は、DNAによるノラネコの親子判定を世界で初めて実施された方で、長年ねこ学の研究を行ってきた研究者なのだ。

 

展示は西南の博物館らしく、「ねことキリスト教」を扱った章と「ねこ学への招待」と題した章の大きく二つに分けられている。

 

「ねことキリスト教」では、猫と人との関わりを中心に紹介されており、「ねこ学への招待」では福岡県相島で行われた調査に基づいた 研究結果や、ノラネコの調査方法などについての展示がなされている。

 

このように、展示の全てがねこで覆い尽くされている。

それが「ねこ学への招待」なのだ。

 

ねこ学は実に奥が深い

西南学院大学博物館

当然、中も猫で溢れている

「ねこ学って言っても、何してるの?」

 

その答えは、この展示に全て詰まっている。

 

ねこ学とは単に猫の行動や身体を観察し、調べるだけの学問ではない。

猫の謎を科学的に解き明かしていく学問なのである。

 

 

西南学院大学博物館

「えっそんなものまで?」と思ってしまう様な教授のカバンの中身

 猫に関する数々の展示品の中で、特に面白かったのは教授のカバンの中身である。

 

これは山根教授が猫観察に出かける際のカバンの中身であり、猫調査の際に必要である道具がぎっしりと詰まっている。

 

博物館でカバンの中身!?と思うかもしれないが、ツイッターのカバンの中身タグを見ている様な、そんなワクワクとした気持ちで見て欲しい。

 

あれはだいたい似たり寄ったりな中身だが、先生のカバンの中身は絶対にどこを探しても同じものは無いと言い切れる。

間違いない。

 

まず先生のカバンには、ノラネコ観察カードが入っている。

これは確認した猫の柄や性別、年齢と言った特徴を記録しておくためのもので、ご丁寧に事前に猫の輪郭が印刷してある。

 

もちろん先生は色鉛筆もお持ちなので、その場で即座に猫の顔や胴体の模様を描けるのだ。

ちなみに尻尾は印刷されていないので、ジャパニーズボブテイルでも、尾曲猫でも心配はない。

 

さらに、猫の大きさを測るメジャーや位置を確認するGPSレコーダー。

猫のDNA採取をするための道具一式までも入っているのだから驚きである。

 

これは人間と同じ様に、綿棒で口の中の粘膜を採取するのだとか。

今まで猫の口を開けてろくな目にあったことが無いので、猫の口を開けて綿棒を入れると聞くと酷く恐ろしいことの様に思えるが、きっとコツがあるに違いない。

 

そもそもノラネコと友達になるにはかなりの時間を必要とするはずなので、先生はそもそも相当な猫好きなのだろう。

西南学院大学博物館

先生の猫記録ノート。その数は70冊を超える。

 

猫が好きでも、そうじゃなくても行ってみて

西南学院大学博物館

実際に個体識別カードを描いてみるワークショップも

ここで紹介できたのは展示のほんの一部であるが、決して広くはない展示室には先生の長年の研究で得たコレクションがぎっしりと展示されていた、

 

「ねこ学への招待」展は、猫好きのためだけにある展示かと言われれば、そういった訳ではない。

 

個人的には、猫にあまり興味がない人にこそ見て欲しい展示だ。

この場を訪れれば、きっと「新しい発見」があるはずである。

 

もしかしたら明日から猫を見る目が、変わるかもしれない。